最近、渋谷や新宿などの街なかで、未来から来たような銀色のボール「Orb(オーブ)」を見かけたことはありませんか?
実はこれ、ただのオブジェではないんです。これは、あのChatGPTの生みの親として有名なサム・アルトマン氏が始めた「ワールドコイン」という、世界を変えるかもしれない壮大なプロジェクトへの入り口なのです。
このプロジェクトは、一方では「AIと人間をしっかり区別して、みんなに富を分け与えよう」という、まるで夢のような話として注目されています。しかしその一方で、私たちの「目(虹彩)」という非常に大切な個人情報を集めるやり方には、「プライバシーは大丈夫なの?」と世界中から心配の声が上がっています。
この記事では、単にOrbがどこにあるかを紹介するだけではありません。「ワールドコインって一体何?」という基本的なところから、私たちが「虹彩」を登録することで何がもらえて、どんなリスクがあるのかまで、できるだけ分かりやすく解説していきます。
ワールドコインって、そもそも何?
ワールドコインは、2023年7月に本格的にスタートし、今では世界中で450万人以上が登録している大きなプロジェクトです。一言でいうと、「AIと人間を区別するためのデジタル身分証明書」を作るプロジェクトです。
ChatGPTの生みの親が考える「未来の身分証明書」

このプロジェクトを立ち上げたサム・アルトマン氏は、AI開発で世界をリードするOpenAI(ChatGPT)のCEOでもあります。
ワールドコインのプロジェクトは、アルトマン氏たちが2019年に設立した「Tools for Humanity(TFH)」という会社が中心となって進めていて、彼らがワールドコインで解決しようとしているのは、AIが進化する未来の大きな課題2つです。
課題①:AIと人間の見分けがつかなくなる
一つ目は、AIと人間の見分けがつかなくなる問題です。すごく賢いAIが人間になりすまして、インターネット上がニセモノだらけになったら大変ですよね。SNSでデマが広がったり、ネット投票が乗っ取られたりするかもしれません。
ワールドコインが作る「人間であることの証明(Proof-of-Personhood)」は、そんな未来への備えなんです。
課題②:AIが生み出す富をどう分けるか
二つ目は、AIが生み出す富をどう分けるかという問題です。AIが人間の仕事をたくさんこなすようになると、仕事が減って経済的な格差が広がるのでは、と心配されています。そこで、ワールドコインは「ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)」という形で、AIが生んだ豊かさを世界中の人々に配る仕組みを考えています。
この壮大な計画は決して夢物語ではなく、シリコンバレーの有名な投資会社などから、合計で2.5億ドル(日本円で350億円以上)もの資金を集めていることからも、その本気度がうかがえます。
プロジェクトは、アルトマン氏たちが2019年に設立した「Tools for Humanity(TFH)」という会社が中心となって進めています。
ワールドコインを支える3つのアイテム
ワールドコインの世界は、次の3つのアイテムがセットになって動いています。
- World ID(ワールドID)
これは「未来のデジタルパスポート」のようなものです。名前や住所などの個人情報を出さなくても、「あなたが世界でたった一人の、本物の人間である」ことを証明してくれます。Orbで虹彩をスキャンすると発行される、匿名の証明書です。 - WLDトークン(ワールドコイン)
World IDを認証した人にごほうびとして無料で配られる、プロジェクト独自の暗号資産(仮想通貨)です。これは、たくさんの人に参加してもらうためのきっかけであり、将来的にはベーシックインカムを配るための「お金」になることが期待されています。 - World App(ワールドアプリ)
World IDやWLDトークンを管理するための、スマホ用のお財布アプリで、このアプリでWLDトークンを受け取ったり、友達に送ったりできます。近くにあるOrbの場所を探して予約する機能も、このアプリにあります。
どうして「目」で認証するの?Orbで虹彩スキャンする仕組み

ワールドコインが本人確認に「虹彩(こうさい)」を選んだのには、ちゃんとした理由があります。虹彩とは、目の黒目の周りにあるドーナツ状の部分のことで、ここの模様は指紋と同じように一人ひとり全く違い、一生変わらないと言われています。だから、本人確認の方法として、とても正確なんです。
- スキャン:銀色のボール「Orb」の前に立って、レンズをじっと見つめます。すると、高性能カメラがあなたの虹彩をスキャンします。
- 暗号化:Orbはスキャンした虹彩の画像を、その場で「虹彩コード」という特別な暗号データに変換します 8。
- プライバシーへの配慮:ここが一番大事なポイントです。ワールドコイン側の説明によると、元の虹彩画像は、初期設定ではすぐに削除され、どこにも送られたり保存されたりしないとのことです。あなただけのユニークさを確認するために必要な「虹彩コード」だけが使われる、とされています。
- だぶりチェック:作られた虹彩コードが、すでに登録されている人のものと重複していないかを確認します。これで、あなたが初めて登録する、唯一の人間であることが証明されます。
この仕組みには、「ゼロ知識証明」といった難しい最新技術が使われています。これは、詳しい情報を隠したまま、正しいことだけを証明できる技術で、プライバシーを守るために役立つと言われています。
日本でOrbを体験!設置場所と登録のしかた
ワールドコインの「World ID」を手に入れるには、実際にOrbが置いてある場所に行って、虹彩をスキャンしてもらう必要があります。ここでは、その具体的な手順と、日本国内の主な設置場所をご紹介します。
登録はかんたん!4つのステップ
World IDの認証は、誰でも簡単にできるように、とてもシンプルな4つのステップで完了します。
まず、お使いのスマホに「World App」をダウンロードしましょう。
アプリを起動したら、画面の案内に従ってアカウントを作ります。このとき必要なのは電話番号だけで、名前やメールアドレスは要りません。プライバシーに配慮した作りになっています。
アカウントができたら、アプリの設定画面から「Orbを探す(Find an Orb)」を選びます。スマホの位置情報をONにすると、近くにあるOrbの場所が地図に表示されるので、行きたい場所と時間を選んで予約しましょう。
現地へ行く前に、一つだけ注意点があります。もしコンタクトレンズ、特にカラーコンタクトを使っている場合は、スキャンがうまくいかないことがあるので、外すように言われています。現地で外せるように、ケースや保存液を持って行くと安心です。
予約した場所に行くと、スタッフ(Orb Operator)さんが待っています。アプリに表示されるQRコードをOrbに見せて、Orbのレンズを数秒間見つめるだけ。あっという間にスキャンは終わります。痛みなどは全くありません。認証が成功すれば、あなたのWorld Appに「World ID」が発行されます。
日本のどこにあるの?全国のOrb設置場所リスト
ワールドコインは日本でも広まっていて、東京や大阪だけでなく、地方の都市にも設置場所が増えています。以下は、2025年時点での主な設置場所です。
ワールドコインは、ただ数を増やすだけでなく、色々な人が集まる場所を選んでOrbを置いています。
例えば、福岡のコワーキングスペース「The Company」は、新しいテクノロジーに敏感な人たち向け。渋谷の「ビームスメン」のようなアパレルショップや、各地のカフェに置くことで、もっと若い人たちにも知ってもらおうとしています。
都道府県 | 名称・施設 | 住所 |
東京都 | ビームスメン渋谷 | 渋谷区神南1-15-1 |
---|---|---|
東京都 | Cotti Coffee 西池袋店 | 豊島区西池袋3-29-11 |
東京都 | Crypto Lounge GOX | 新宿区西新宿7-1-7 |
東京都 | TimeOut Cafe&Diner | 渋谷区東3-16-6 |
神奈川県 | アソビル (ASOBUILD) | 横浜市西区高島2-14-9 |
埼玉県 | 肉バル×アヒージョ Trim | さいたま市浦和区北浦和4-3-10 |
大阪府 | 株式会社和の糸 | 大阪市北区梅田1-2-2 |
大阪府 | DePIN station Osaka | 大阪市浪速区日本橋4-11-13 |
京都府 | 世界倉庫 (Sekai Soko) | 京都市中京区河原町通蛸薬師上ル |
兵庫県 | 俺たちカレー部。 神戸元町店 | 神戸市中央区元町通3-12-3 |
北海道 | Flair bar es | 札幌市中央区南5条西5丁目 |
宮城県 | (過去に設置例あり) | – |
愛知県 | RELiC | 名古屋市中区大須3-11-26 |
岡山県 | KAMP Backpackers Inn&Lounge | 岡山市北区奉還町3-1-35 |
福岡県 | The Company 福岡PARCO店 | 福岡市中央区天神2-11-1 |
福岡県 | The Company キャナルシティ博多前店 | 福岡市博多区祇園町8-13 |
鹿児島県 | 電撃ベイサイド | 鹿児島市泉町5-1 |
- このリストは代表的な場所で、全ての設置場所ではありません。
行く前にチェック!公式アプリで最新情報を確認しよう
Orbの設置場所や営業時間は、よく変わることがあります。
期間限定でオープンする場所もあります。せっかく行ったのに閉まっていた…なんてことがないように、出かける前には必ずWorld Appを開いて、最新の情報を確認してください。 公式アプリの情報が一番正確です。
ワールドコインのメリット・リスク・デメリット
ワールドコインに参加することは、ただ新しい技術を試すだけではありません。自分のとても大切な生体情報と引き換えに、良いこと(メリット)と、無視できない心配事(リスク)の両方を受け入れる、ということです。
【メリット】無料でもらえる暗号資産「WLD」と、未来のお金の話
一番わかりやすいメリットは、お金のインセンティブです。
- WLDトークンが無料でもらえる:World IDを認証すると、まず初めにまとまった量のWLDトークンがもらえ(過去には25WLDなど)、その後も定期的にもらい続けることができます。早く登録した人ほど、もらえる量が多くなる傾向があるようです。
- 友達に送ったり他の暗号通貨と交換できる:もらったWLDは、World Appというお財布アプリで管理できます。友達に送ったり、他の暗号資産と交換したりすることも可能です。
- 値上がりに期待できる:WLDは、他の暗号資産と同じで価格が大きく動いており、プロジェクトの将来性から値上がりにも期待できます。(もちろん、将来の値動きを正確に予測することは困難であり、値下がりする可能性もあります。)
【リスク】プライバシーと個人情報は大丈夫?
ワールドコインが一番批判されているのが、このプライバシーとデータセキュリティの問題です。素晴らしい未来を語る一方で、世界中の国々から「ちょっと待った!」と厳しい目で見られています。
- 香港:個人情報を守る委員会が「顔や虹彩のデータを集めるのはやりすぎだ」として、ワールドコインの活動をストップさせました。プライバシーに関する説明がちゃんとされていなかったことも問題になりました。
- 韓国:こちらも個人情報保護の委員会が、「法律を守らずに虹彩の情報を集めた」などとして、罰金を科しました。
- ヨーロッパ:個人情報保護にとても厳しいヨーロッパでも、スペインやポルトガルなどで活動停止命令が出ています。
- その他の国々:ケニアやブラジルなど、他の国でも同じような心配から調査や活動停止の動きが広がっています。ワールドコイン側の「大丈夫!」という主張:こうした批判に対して、ワールドコインは「最新の暗号技術でプライバシーはしっかり守ります!」と主張しています。
こうした批判に対して、ワールドコインは以下のような対策を行うことで「最新の暗号技術でプライバシーはしっかり守ります!」と主張しています。
- ゼロ知識証明(ZKP):これは、例えば「秘密の合言葉を知っている」ということを、合言葉そのものを相手に教えずに証明できる、魔法のような技術です。これを使えば、あなたの虹彩の情報を誰にも見せることなく、「あなたは本物の人間です」と証明できる、と説明されています。
- セキュアマルチパーティ計算(SMPC):これは、複数の人がお互いのデータを見せ合うことなく、みんなのデータを合わせた計算ができる技術です。これを使って、あなたの虹彩データと他の人のデータが被っていないかを、プライバシーを守りながら確認している、とのことです。
【デメリット】国内取引所では取り扱っておらず入手に手間がかかる
残念ながら、2025年現在、WLDは日本の暗号資産取引所では扱っていません。そのため、日本円にするには少し手間がかかります。
- World Appから、BinanceやBybitといった海外の取引所にWLDを送ります。
- その海外取引所で、WLDをビットコインなどに交換します。
- 交換したビットコインなどを、日本の取引所にある自分の口座に送ります。
- 日本の取引所で日本円に換えて、銀行口座に出金します。この方法は、暗号資産に慣れていないと少し難しく感じるかもしれません。
日本の法律ではどうなってるの?
日本でも、ワールドコインの活動は「個人情報保護法」という法律と無関係ではありません。
日本の法律では、虹彩や指紋のような生体情報は「要配慮個人情報」といって、特に慎重に扱わなければいけない情報に分類されています。これを集めるときは、本人のしっかりとした同意が必要です。
ワールドコインが日本の法律でチェックされた場合、次のような点が問題になるかもしれません。
- ちゃんと理解して同意してる?:自分の虹彩データがどう使われるか、ちゃんと分かった上で同意していますか?
- 本当に虹彩じゃなきゃダメ?:「人間証明」のために、そこまで大事な虹彩の情報を集める必要はありますか?
- 海外にデータを送って大丈夫?:データが海外に送られる場合、日本の法律で決められたルールを守っていますか?
日本で個人情報のルールを守っているかを見張っているのが、個人情報保護委員会(PPC)です。もし心配なことがあれば、誰でも相談窓口に電話することができます。
ワールドコインの未来はどうなる?
ワールドコインの本当の価値は、今もらえるWLDトークンだけではありません。その土台となる「World ID」が、将来どれだけたくさんの人に使われるようになるかにかかっています。
「人間証明」が当たり前になる世界?
ベーシックインカムの夢も大きいですが、もっと現実的に、World IDが色々な場面で使われるようになるかもしれません。
次世代のWeb3での活用
- DAO(分散型自律組織):みんなで物事を決めるときに、一人一票の公平な投票ができるようになります。
- エアドロップ:新しいプロジェクトがトークンを配るとき、ボットに荒らされず、本物の人間にだけ配れます。
- ブロックチェーンゲーム:一人が何個もアカウントを作ってズルするのを防げます。
- ソラナ(Solana)など、他のブロックチェーンでも使えるように開発が進んでいます。
現在のネット社会での活用
- SNS:なりすましや迷惑なボットをなくして、もっと快適な場所にできます。(RedditやTelegramとの連携が考えられています)
- ネットショッピング:限定品を買い占めたり、クーポンを不正利用したりするのを防げます。(Shopifyでの利用が検討されています)
- ネット投票:信頼できる投票やアンケートができます。
ワールドコインの最終的な目標は、インターネットの「本人確認のスタンダード」になることです。
今、私たちが色々なサイトにGoogleやFacebookのアカウントでログインするように、将来は「World ID」でログインするのが当たり前になるかもしれません。そうなれば、ワールドコインはとてつもない価値を持つことになります。
日本の大企業も注目!
ワールドコインが日本市場に本気であることの証拠として、広告業界の大手、博報堂との提携があります。これは、博報堂が持つたくさんの企業とのつながりを活かして、日本の会社にWorld IDの技術を広めていこうという動きです。ワールドコインが、日本で本格的にビジネスを始めようとしているサインと言えるでしょう。
さらに、世界では決済サービスのPayPalや、サム・アルトマン氏自身の会社であるOpenAIとの連携もウワサされており、大きなプラットフォームと組むことで一気に普及させようという戦略が見えます。
投資としてのWLDトークンはアリ?ナシ?
WLDトークンは、その話題性から投資の対象としても注目されていますが、同時に大きな不確実性も抱えています。
アルトマン氏の一言で動く価格
WLDの価格は、プロジェクトのニュースだけでなく、サム・アルトマン氏やOpenAIの動向に大きく影響されることがあります。OpenAIが新しいAIを発表したときにWLDの価格が急騰したこともありました。
まだ価値は未知数
価格はとても不安定で、今の価値はほとんどが「将来への期待」に基づいていると言えます。
将来の価値を決めるカギ
WLDトークンが将来本当に価値を持つかは、以下の点にかかっています。
- 制の壁:世界中のプライバシーに関するルールをクリアできるか。
- ユーザー数:世界中で何億人もの人が使うようになるか。
- 実用性:World IDが本当に色々なアプリで使われ、トークンに使い道が生まれるか。
- 市場の波:AIや暗号資産全体のブームが続くか。
まとめ:ワールドコインはAIと人間の区別と共存を目指すプロジェクト
ワールドコインは、AIが当たり前になる未来で、「人間であることをどう証明するか?」という大きな問題に対して、とても大胆でハイテクな答えを出そうとしています。迷惑なボットがいないインターネットや、AIが生んだ富をみんなで分かち合うベーシックインカム。その未来像は、とても魅力的ですよね。
でも、そのやり方は、私たちのプライバシーという、とても大切なものを天秤にかけることになります。自分の「虹彩」という、一生変わらない、自分だけの大事な情報を、一つの会社が管理するシステムに登録することのリスクは、決して小さくありません。世界中の国々が心配しているのは、まさにその点です。
日本でも、Orbを体験できる場所はどんどん増えています。この記事では、そのための地図と、プロジェクトの仕組み、そして世界がどんな点を心配しているのかをお伝えしました。
最終的に、あの銀色のボールを覗き込むかどうかを決めるのは、あなた自身です。それは、ただ暗号資産をもらうというだけの話ではありません。利便性や未来の可能性を選ぶのか、それとも、個人のプライバシーという大切なものを守ることを選ぶのか。このプロジェクトが持つキラキラした一面と、見過ごせない影の両方を知って、じっくり考えてみてくださいね。
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