海外FXにおける取引プラットフォームとして、世界的に浸透している「MetaTrader」(メタトレーダー)には、古いバージョンのMT4(MetaTrader 4)と新しいバージョンのMT5(MetaTrader 5)の2種類が存在します。
海外FXを使う際、大抵の場合はMT4かMT5のどちらかを選ぶことになりますが、一体どちらを選ぶべきかと悩む人も少なくないでしょう。
この記事では、MT4とMT5の違いについて、詳しくまとめました。
MT4とMT5の違いを15の観点で比較
MT4とMT5の特徴を簡潔にまとめると、次のようになります。
- MT4:有志が開発したインジケータやEAが豊富で、自動売買に適している
- MT5:分析機能や取引方法が豊富、かつ動作スピードが速く、スキャルピングやデイトレードなど裁量トレードに適している
では、MT4とMT5は具体的にどのような部分が異なるのか、合計15の観点から徹底比較します。
比較項目 (クリックで詳細へ) | MT4 | MT5 |
---|---|---|
対応業者 | 多い | やや少ない |
動作速度 | 遅い | 速い |
プログラム言語 | MQL4 | MQL5 |
時間足 | 9種類 | 21種類 |
標準搭載のインジケータの種類 | ◯ | ◎ |
カスタムインジケータ・EAの種類 | ◎ | ◯ |
描画ツールの種類 | ◯ | ◎ |
注文方式 | 5種類 | 7種類 |
プライスボード | ✕ | ◯ |
取引板情報 | ✕ | ◯ |
経済指標カレンダー | ✕ | ◯ |
ナビゲーターウィンドウ | 見にくい | 見やすい |
チャート分割機能 (Androidアプリ) | ✕ | ◯ |
ストラテジーテスターの機能 | ◯ | ◎ |
アップデートの頻度 | △ | ◎ |
対応業者
MT4はほとんど全ての海外FX業者で採用されている一方、MT5は採用していない業者もあります。
MT5を利用したい場合は各業者の対応状況を確認する必要があります。
FX業者名 | MT4 | MT5 | その他 |
---|---|---|---|
Axi | ◯ | ||
AximTrade | ◯ | ||
AXIORY | ◯ | ◯ | cTrader |
Axon Markets | ◯ | ||
BigBoss | ◯ | ◯ | CRYPTOS |
easyMarkets | ◯ | ◯ | 独自ツール |
Exness | ◯ | ◯ | アプリ |
FBS | ◯ | ◯ | |
FinPros | ◯ | ||
FXGT | ◯ | ◯ | |
FxPro | ◯ | ◯ | cTrader |
HFM | ◯ | ◯ | アプリ |
HYCM | ◯ | ◯ | 独自ツール |
IC Markets | ◯ | ◯ | cTrader |
iFOREX | 独自ツール | ||
Iron FX | ◯ | アプリ | |
IS6FX | ◯ | ◯ | |
Milton Markets | ◯ | ||
MYFX Markets | ◯ | ◯ | |
OQtima | ◯ | cTrader | |
ThreeTrader | ◯ | ||
Titan FX | ◯ | ◯ | |
TradersTrust | ◯ | ◯ | |
Tradeview | ◯ | ◯ | cTrader |
Vantage Trading | ◯ | ◯ | アプリ |
VT Markets | ◯ | ◯ | アプリ |
XMTrading | ◯ | ◯ | アプリ |
XS.com | ◯ | ◯ |
動作速度
MT4は動作がもっさりしているのに対し、MT5はサクサクと動作します。
なぜなら、MT4はパソコンに搭載されているCPUのコアを1つしか使えないのに対し、MT5は複数コア(マルチコア)動作に対応しているため、より効率よくマシンパワーを発揮できるためです。
多くの通貨ペアのチャートを表示した場合、MT4では動作が遅くなることもありますが、MT5ならよほどパソコンのスペックが低くない限りストレスなく表示させることができるでしょう。
スピード感を重視するスキャルピングトレーダーや短期トレーダーにとって、MT5の快適な操作感は大きなメリットです。
例えば、スキャルピングの際には注文から約定までのタイムラグが利益に直結するため、MT5のほうが適しているといえます。
プログラム言語の違い
MT4はMQL4、MT5はMQL5という独自のプログラム言語を使用しています。
MQLという名前こそ一緒ですが、両者には互換性がなく、MT4のカスタムインジケータやEAはMT5では動作しません。(逆も然り)
MT4のほうが歴史が長いため、MT5用のインジケータやEAは種類が少ないのが現状です。
MQL4からMQL5への移行が足かせとなり、MT5用インジケータやEAの普及を妨げている要因の1つだと考えられます。
時間足の種類
MT4には9種類の時間足が搭載されていましたが、MT5ではMT4にはない12種類が追加され、合計21種類を選べるようになりました。
2分足、3分足、6分足など細かい足がそろっているので、より精緻なチャート分析が可能です。
例えば、短期的なトレンド変化を敏感に捉えたいスキャルピングトレーダーにとって、15分足や30分足だけでは不十分な場合、MT5なら2分足や5分足を利用できるので有利です。
- 1分足
- 2分足
- 3分足
- 4分足
- 5分足
- 6分足
- 10分足
- 12分足
- 15分足
- 20分足
- 30分足
- 1時間足
- 2時間足
- 3時間足
- 4時間足
- 6時間足
- 8時間足
- 12時間足
- 日足
- 週足
- 月足
MT5で追加された時間足は緑色で強調しています。
ただし、時間足が追加されたのはパソコン版のMT5のみで、スマホアプリのMT5はMT4と同じ9種類のままとなっています。
標準搭載のインジケータの種類
MT5の方が標準で搭載しているインジケータの種類が多いです。
基本的なものはMT4でもそろっていますが、高度な分析に使用するインジケータを重視するならMT5を選ぶことができます。
移動平均線やボリンジャーバンドなど、両者共に備わっている基本的なインジケータしか使わない場合は、両者の違いは関係ありません。
対応するカスタムインジケータ・EAの種類
MT5用のインジケータやEAは増えつつありますが、有志が開発したカスタムインジケータやEAの種類は、圧倒的にMT4の方が多くの種類がそろっています。
EAや特徴的な戦略にこだわりのあるトレーダーは、MT4を選ぶことが望ましいでしょう。
一方、これから勉強してEAやインジケータを自作するつもりなら、最初からMT5を使い始め、MQL5に慣れておくと良いでしょう。
MetaTraderの公式コミュニティサイト「MQL5.com」での、インジケータやEAの配信数を調べてみても、明らかな違いがありました。
MT4用 | MT5用 | |
---|---|---|
インジケータ | 9,221 | 5,112 |
EA | 7,617 | 4,194 |
描画ツールの種類
MT5では、MT4にはなかった新たな描画ツールが追加されています。
MT4にもたくさんの描画ツールが揃っていますが、それらに加えエリオット推進・修正波、矢印線、長方形ラベルなどが使えます。
注文方法の種類
MT4では元々、成り行き・Buy Limit(買い指値)・Sell Limit(売り指値)。・Buy Stop(買い逆指値)・Sell Stop(売り逆指値)の5種類の注文方法が用意されています。
Buy Stop Limit(買いストップリミット)・Sell Stop Limit(売りストップリミット)の2種類が加わり、合計7種類の注文方法が使えるようになりました。
- 成り行き:現在の値段ですぐに発注
- Buy Limit(買い指値):現在値よりも低い価格を指定して買い注文
- Sell Limit(売り指値):現在値よりも高い価格を指定して売り注文
- Buy Stop(買い逆指値):現在値よりも高い価格を指定して買い注文
- Sell Stop(売り逆指値):現在値よりも低い価格を指定して売り注文
- Buy Stop Limit(買いストップリミット):現在値よりも高い価格を指定して、到達した場合にのみ有効になるBuy Limit(買い指値)
- Sell Stop Limit(売りストップリミット):現在値よりも低い価格を指定して、到達した場合にのみ有効になるSell Limit(売り指値)
プライスボードの有無
MT5ではプライスボードを見ることができます。
プライスボードは、売買のワンクリックボタンに加えて、最新の気配値やスプレッド、直近の高安値、スワップポイントが一体となって表示されます。
全体的な市場の動向把握に役立つだけでなく、即座にワンクリック注文ができるため、 売買頻度の高いスキャルピングにおいて役立つでしょう。
例えば、主要通貨が全て高騰している最中でドル円だけが反落している、といった局所的な乖離を一目で掴んで、すぐに注文ができます。
取引板情報の有無
MT5では新たに取引板を表示する機能が備わりました。
取引板は、各価格帯における買い注文と売り注文の状況がわかるもので、価格のサポートやレジスタンスを把握するのに有用です。
また、スキャルピングトレードを行う場合、取引板の厚みを確認しながら注文することで、意図せずスリッページを食らうリスクを回避できます。
ただし、板情報に対応している業者はまだ少ないのが現状で、MT5に対応しているからといって取引板を見られるわけではありません。
経済指標カレンダー
MT5では、世界各国で発表される重要な経済指標を確認できるようになり、直近発表される指標をチャートの下部に表示できるようになりました。
経済指標そのものに興味がなくても、値動きが荒くなることを理由に経済指標を避けてトレードしている人は多いので、チャート上で直接確認できるのは重宝する機能でしょう。
ナビゲーターウィンドウ
インジケータやEA(エキスパートアドバイザー)を管理する際に使う「ナビゲーターウィンドウ」も、MT4とMT5では大きく作りが異なります。
MT4では縦に長く表示されていて、目的のものを見つけるのに苦労しましたが、MT5はカテゴリ訳されて見やすくなっています。
たくさんのインジケータやEAを管理する人は特に差を体感するでしょう。
Androidアプリでのチャート分割機能
MT5のAndroidアプリでは、画面を2分割して2つの異なるチャートを同時に表示できます。
例えば、ドル円とユーロ円を比較しながらトレードする、といったことが可能で、相関性を活かしたなどに威力を発揮します。
MT4アプリでは同時に1画面しか表示できないため、MT5のこの機能は非常に有用です。
ストラテジーテスターの機能
EAの性能を検証する「ストラテジーテスター」の機能も、MT5になって大きく進化しました。
MT4では一度に一つの通貨ペアしか検証できませんでしたが、MT5では複数の通貨ペアを同時にバックテストできるようになり、効率よくEAの検証ができるようになりました。
また、可視化、フォワード最適化、市場スキャンなど新たな機能も加わりました。
アップデートの頻度
MetaTraderの開発元であるMetaQuotes社は、MT4の開発に消極的で、2021年以降はほとんどアップデートされておらず、直近の2023年はたった3回しか実施されていません。
対するMT5は、現在も頻繁にアップデートが行われていて、かなり開発に力を入れていることが伺えます。
MT4とMT5、どちらがおすすめ?
自動売買をするならMT4が有利
自動売買をするためにMetaTraderを使うなら、有志によってたくさんのEAが開発されてきたMT4が良いでしょう。
MT5の普及に伴い、最近はMT5用のEAも増えてきましたが、それでもまだまだMT4用のEAが多く出回っています。
ただし、これから自分でEAを作る場合は、将来性を見越してMT5のMQL5で開発するのが良いでしょう。
裁量トレードにはMT5が最適
自動売買をせず、裁量トレードに特化して使う人は、MT4よりも高機能で動作の早いMT5を使うことをおすすめします。
MT5にはより多くの時間足や描画ツール、注文方法などが備わっているため、基本的にMT5を選ぶデメリットがありません。
数年前まではMT5対応業者が少なく、使いたい業者でMT5が使えないという問題が多く発生していましたが、最近はMT5もかなり普及してきて、人気の海外FX業者の多くで使えるようになりました。
テクニカル分析ならMT5が有利
チャート分析やインジケータによるテクニカル分析をするなら、より多くの機能が備わったMT5が有利です。
MT4にはない時間足やインジケータ、描画ツールが多く備わっているため、より幅広い分析ができるようになりました。
MT4とMT5どちらが人気?アンケート調査結果
MT4とMT5はどちらが人気があるのか、534人を対象にアンケート調査を実施しました。
取引に使っているプラットフォームとして、最も人気だったのがMetaTrader 5(MT5)で、僅差でMetaTrader 4(MT4)、MT5・MT4で全体の9割を占めていました。
僅かではあるものの、cTrader(4%)やTradingView(3%)などが挙がりました。
詳細なデータ
プラットフォーム | 回答 | 割合 |
---|---|---|
MT5 | 398 | 48.7% |
MT4 | 343 | 41.9% |
cTrader | 32 | 3.9% |
TradingView | 22 | 2.7% |
その他 | 23 | 2.8% |
MT4とMT5の両方が使えるおすすめ業者
海外FXを選ぶなら、MT4とMT5どちらも使える業者おすすめです。
ここではMT4とMT5の両方に対応している業者を5つピックアップしてご紹介します。
XMTrading(XM)
XMTrading(XM)は、日本人に最も人気のある海外FX業者で、ボーナスキャンペーンが充実していたり、最大1,000倍のレバレッジで取引できる点が魅力です。
MT4とMT5の両方に対応しているほか、MT5口座を作ればXM公式アプリからも取引できます。
AXIORY
AXIORYは、海外FXとしてはトップクラスの低スプレッドを実現していて、スキャルピングに有利な業者です。
また、完全信託保全を導入することで、顧客の資金を第三者監視のもと安全に守っている点も高く評価できます。
MT4とMT5に加え、スキャルピングに適したcTraderにも対応しています。
BigBoss
BigBossは、日本市場にとても力を入れている海外FX業者で、口座開設が簡単なことから初心者を中心に人気を集めています。
口座タイプはスタンダード口座とプロスプレッド口座で、MT4とMT5の両方に対応しています。
FXGT
FXGTは、FXを最大5,000倍、仮想通貨を最大1,000倍のハイレバレッジで取引できる業者で、ボーナスキャンペーンもかなり豪華です。
ボーナスを駆使してFXやビットコイントレードをしたい人にはおすすめできます。
もともとMT5のみの対応でしたが、現在はMT4も選べるようになり、裁量トレードとEAどちらにも使える業者になりました。
HFM
HFMは東南アジア圏を中心に人気を集めている業者で、上記の業者に比べると日本での知名度は高くありません。
HFMは取引銘柄がかなり幅広く、特にCFD商品のラインナップが多いので、様々なアセットに投資したい人には魅力的に映るかもしれません。
MT4とMT5のほか、HFM公式アプリにも対応しています。
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